イギリスのピアノ弾き




 朝食を食べるだけで大変疲れた。俺はこれから本当にやっていけるのか・・・・・・?
 明日から新学期ということなので、今日のうちに学校の中を見て回っておこう。休み明けの外国人で埋め尽くされた校舎をじろじろと見学する勇気はまだない。
 ヘンゼルに一緒に来てくれるよう頼もうかと考えながら部屋に戻るとまだ寝ていた。もう九時すぎてるぞ・・・・・・。しかも姿勢が食堂に行く前と全く変わっていなくて怖い。しっかり口を閉じていたので鼻をつまんでみたが、二分くらいしてもやっぱり反応が無かったので逃げるように部屋を出てきた。後で戻るのが嫌だ。
 ミハイルとコンラードは用事があると言って騒ぎながらどこかへ行ってしまったし、一人で行くしかないか。
 俺一人で勝手に入ったらまずいかもしれないので一応学長先生のところへ許可をもらいに行くと、夏休み中でも部活や何かで学校棟に入る生徒もいるので好きに入って大丈夫だということだった。ただし普段は制服か学校指定ジャージ着用でないといけないらしい。もちろんジェットコースターの俺がそんなものを用意できているわけも無いので、特別に私服での侵入許可を得た。
 鍵のかかっていないところならどこでも入っていいようだし、早速出発だぜ!


 はあ。
 さてさて。
 いやあ、大きくて広い学校だ。
 土足なんて高校には珍しいなあ。
 若葉高校なんて築五十年も過ぎた木造建築だったし。それを愛していたけど。
 いやあ、しかし、実に立派な学校だ。
 まあ、うん。あれだ。
 
 
・・・・・・迷っちゃったんだぜ。

 右を向いても左を向いても白い石壁。窓の外には生い茂る緑。
 
どこだよここは!? ただでさえ別世界の学院からさらに別世界っ? すでに宇宙!?
 お、落ち着くんだ天下統一。いいか、ついさっきまでは現実空間だったんだ。普通に異様な広さの教室を覗いて、標本や蔵書がいやに怪しい理科室に立ち寄って・・・・・・。

 あ、もうさっきから非現実空間だ。あははははははは。

 ・・・・・・ん、あれ?
 今まで気がつかなかったけど、なんか、変な音がする。耳を澄ますと、さっきまでは自分の足音と風の音しか聞こえなかった空間にもう一つの音が交じっていた。これって・・・・・・、

「ピアノの音・・・・・・?」

 人気の無い校舎でピアノの音って普通怖いはずなのに、この大理石の静かな空間にはよく合っている気がした。澄んだ綺麗な旋律は耳に残り、自然と足がそちらへ向かう。
 だんだんと聞こえる音が大きくなって、今目の前には大きな扉がある。そういやいつの間にか外だ。どうやらピアノの音は校舎と渡り廊下で繋がっているこの別の建物から響いているようだ。
 金色のドアノブに手が伸びる。もうすぐ指先が触れる、という時に、俺の手が止まった。
 待てよ。これって、今のこの状況って、

 
死亡フラグ立ってないか?

 だって、あれだぜ? 今の俺って、人気の無い校舎→突然のピアノの音→一人ふらふらと音を追う男子高校生→目の前にドア→『死』コースだろこれはあああっ!! この次の段階ってつまり『死』じゃねえか! 開けたら最後「見ーたーなー」でしょこれ!? しかも明日から新学期ってかなりおあつらえ向きなシチュエーションだよ!

 夏休み明けの校舎に突如現る変死体! それは先日転校してきたばかりの日本人男性のものであった!
 同室の生徒「こんなことになるのだったらちゃんと早起きをするべきでした」

 ・・・・・・はっ! 俺の頭の中で一連のドラマが繰り広げられていた! やめるんだ統一! 自分を貶めるな! ヘンゼルを恨んだって何の解決にもならないんだ! ってそういうことでもないんだ!!
 今ここは渡り廊下だ・・・・・・。すぐ横にそれれば緑溢れる外、現在地はよくわからんが校舎の一部なんだからぐるっと回ればいつか寮に着くだろう。そうすれば俺は生き残れるはずだ! 逃げろ! 人は時に逃げてこそ勇者になれる!! うおおおおおおおっ!! 行けっ!! 燃え尽きるまでっ!!
 
落ち着こうか。ピアノの音がするってことは、誰かいるってことだ。その人にここはどこか聞こう。うん、そうしよう。良案だ。
 冷たいドアノブは鍵はかかっていないようで、すんなりと回った。しかしドアはやけに重くて、低く軋んだ音が響いてしまう。
 冷や冷やしながら顔を上げて、正面の壁を仰いだ。

「・・・・・・・・・あ」

 広い空間、高い天井、整然と並んだ長椅子たち、白く光る銀色の燭台
―――
 そして何より、正面の大きなステンドグラス。正面玄関のものも綺麗だったが、優しげな女性と天使の踊るこれはもっと美しくて、神秘的だった。
 さらに顔を上げると、天井まで届くステンドグラスの中ほどに木造の彫刻が掲げられていた。逆光で真っ黒く見えるそれに目を凝らすと十字架にはりつけられたキリストの像だった。顔の細かい表情までは窺えないというのに、本当に見下ろされているような視線を感じて目を逸らす。でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
 ここって・・・・・・礼拝堂、なのかな? 教会へ行ったことはないけどテレビや写真で見たのはこんな感じだった気がする。感心して見回していると、教壇のような机のそばに大きなピアノがあった。

 ・・・・・・あれ、そういえば俺、ピアノの音を追いかけてここに来たんじゃなかったっけ・・・・・・。

 礼拝堂は静まり返っていて、さっきまで響いていた音色はない。おかしいな、と思いながらきょろきょろしていると、ピアノの陰で何かが動いた。
「・・・・・・誰ですか」
「えっ!? あ・・・・・・」
 ピアノから金色の頭がのぞいた。俺からは見えなかったがピアノの椅子に誰か座っていたようだ。人がいて安心した反面、また金髪外国人でどっきどきだ。そろそろ日本人・・・・・・いや、せめてアジア人が欲しい。
 そして全然関係ないが制服・・・・・・この学校の制服・・・・・・赤い・・・・・・。
「あ、あのー、すみません・・・・・・。えーと、実は昨日転校してきた者で、今学校の中を見て回っていたんですが・・・・・・」
 ・・・・・・外国の人って本当に年齢がわからん。俺と同い年くらいだと思ったら小学生だったということもあった。ヘンゼルも別の立場で出会って妻帯者だと言われたら信じるだろうし、椅子から立ち上がってこっちを見ている猫背気味のお兄ちゃんもどう見ても年上にしか見えない。だからとりあえず敬語を使っておけば間違いは無いはずだ。
「転校生・・・・・・ですか? あ・・・・・・、もしかして、噂の日本人の」
 噂になりすぎだろ!! どれだけ日本人を切望してたんだ、この学校は・・・・・・。やっぱり不安だ・・・・・・。
「それで、あのー、広い学校なので、迷ってしまって・・・・・・」
「敬語を使わないで、大丈夫ですよ。僕と貴方は同学年です」
 えっ・・・・・・。まさかの同い年・・・・・・こうして日本人はだんだんと自信を無くしていくのだろうか・・・・・・。
「あはーは、は。よ、よろしく! 俺は天下統一っていうんだ、ぜ」
「僕はフレデリク・リーコックです。・・・・・・イングランド出身です。よろしくです」
「そっか。んじゃ、フレデリク。お前もそんな堅っ苦しい喋り方はやめてくれよ」
 なんかこの学校に来て初めてのまともな出会い方な気がするんだぜ。大人しそうで日本人の俺にも普通に接してくれてるし、仲良くなれるかな?
 ん・・・・・・? あれ、フレデリク、なんか喋らなくなったんだけど・・・・・・って、

「・・・・・・ぅ・・・・・・ぅぇっ」

 
泣いている・・・・・・!! この状況で何故!? いや、落ちついて整理しろ。今確実にわかるのは俺がいじめっこに相当するということだけだ。・・・・・・違うんだぜ!?
「えっ、あ、ど、どうしたんだよ。俺怒らないよ、何があったんだ?」
 いや慌てすぎだろ、俺。まずは俺が落ち着かなければ。
 ピアノまで駆け寄ると、フレデリクは制服の袖でごしごしと顔をぬぐった。
「・・・・・・すみません。まだ、あまり、日本語に慣れていないのです・・・・・・。すみません、ごめんなさい」
「え? あ、ええー・・・・・・。そ、そんなことか。あー、そんなに気にしないでくれ。そのままでいいよ。っていうか俺こそよくわからんこと言っちまってごめん」
 泣くほど気にすることじゃないと思うんだが・・・・・・。俺が日本人だからそう思うのかな? 
 そんなわけないか。
「い、いえ、すみません、イングランドに帰りたいです」
 
そしてまさかのネガティヴ発言!? ここまできたらどうフォローしていいのか!! いや俺も若葉高校に帰りたいから気持ちはちょっとわかるが!
 フレデリクの肩を叩こうか叩くまいか、何か発言しようかしまいか、手を出したりひっこめたり口を開けたり閉めたりで忙しくしていると、先方も落ち着いてきたようだ。鼻をすんすん鳴らしながら恥ずかしそうにうつむいている。うう・・・・・・、俺より年上のようで年下のようだ・・・・・・、俺よりずっとでかいのに。俺がフォローすべき場面なんだろうか、ここは。これでも同い年だし・・・・・・。
「・・・・・・あ、そうだ。な、なあ、さっきピアノ弾いてたのってお前か?」
 ナイス話題転換! のつもりなんだぜ! これで弾いてたのがフレデリクじゃなかったらただのホラーなんだぜ!
「え・・・・・・? あ、はい・・・・・・そうです」
「すごく綺麗だったもんだからついふらふら来ちまったんだよ。あんなに上手に弾けるなんてすごいな」
 俺も太古の昔に習っていたことがあるが、今じゃ簡単な曲でも指がつる。だからピアノが弾ける、しかも男の人には大いに感心してしまう。
「すみません、そんなことないです。上手くないです。でも嬉しいです。すみません、ありがとうございます」
 て、丁寧すぎる・・・・・・。奥ゆかしい、って言葉が明らかに日本人より似合う気がする。
「さっき弾いてたのってなんていう曲なんだ? 俺クラシックとかあんまり知らないんだけど」
 ピアノに立てかけてある楽譜を見ようとすると、慌てたように背中に隠されてしまった。なんだろう、俺の授業用ノートのような問題でもあるのか? いやしかしいきなりノート見せてくれって言われると焦るよな。四時間目のなんてだいたいトイレ行きたいしか書いてな
関係ないよね!!
「あの・・・・・・すみません、とても恥ずかしいのだけれど、僕が作ったんです・・・・・・」
「え、えええっ!? つ、作ったって、自分で作曲したってことか!?」
 フレデリクは縮こまって「はい」と答えた。すげえ、すごすぎるっ!! もう感心通り越して尊敬だぜ!! すごいなあ、格好いいなあ。本当に綺麗な曲で半ば口開いてたしな、俺。それにしてもすごい・・・・・・感動だ・・・・・・。
「な、なあ、もう一度さっきの曲弾いてくれないか?」
「だ、だめです、ごめんなさい。恥ずかしいのです。人に聞かせられるものではないのです。すみません、でも嬉しいです」
 わくわくしながらつついてみたが、楽譜をしっかり抱いて弾いてくれそうに無かった。仕方が無い、今回はあきらめて次に生かそう。
「僕は音楽が好きで、日本の独特の音楽を習うために日本に来ました。日本の音楽もとても素敵です。そして、日本の文化も学ぶためにこの学校に入りました」
「へえー、そうなのかあ・・・・・・」
 俺と同い年で熱心になれることがあるのってやっぱりすごいよなあ。でもこの学校に入学したのは・・・・・・いや、何も言わないんだぜ。俺がまだ知らないだけで、この学校にも素晴らしいところがたくさんあるんだ。あるはずなんだ。あってほしいんだ。
「あ、そ、そうだ。すみません、もしよかったら日本の曲を弾いてもらえませんか?」
「えっ。あー、ごめん。俺ピアノ弾けないんだ・・・・・・」
「あっ、す、すみません。ごめんなさい」
 うおお、この「すみません」→「ごめんなさい」コンボは思いの外こたえる・・・・・・。不思議とピアノを弾けない自分を責めたくなるんだ・・・・・・。
「じゃあ、日本の歌を歌ってもらえませんか? 僕は日本の歌も大好きです」
 ほ、本気ですか・・・・・・。この状況下で歌えってかなり恥ずかしいんですが。
「ごめん、恥ずか・・・・・・」
 
もう泣きそうなんだぜ!! フレデリクも俺もな!!
「無理を言って・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
「いや歌うよ。俺大好きなんだ日本の歌。出し惜しんでみたんだ、ははは」
 いやあ、喜んでもらえて何よりだ。フレデリクは満面の笑みでわくわくしている。でも何故だろう、彼の期待が増すごとに俺の心が締め付けられていく・・・・・・。
「でも日本の歌って何を歌えばいいんだ? あんまり最近の歌とかは知らないぞ」
「それじゃあ、僕は君が代が大好きです。君が代をお願いします」
 ひゅー!! よし来た! 俺も大好きなんだよ君が代!! 若葉高校入学式以来だぜええええっ!! 楽しすぎてちょっと涙が出てきた!!
「えー、それでは、不肖僭越ながら国歌独唱させていただきます」

                君が代は 千代に八千代に
            細石の 巌となりて 苔の生すまで


「えー、この暑い中、最後までご清聴いただきまことにありがとうございます」

 俺・・・・・・なんで山奥のミッションスクールの礼拝堂で国歌独唱してるんだろう
――

「やっぱり、日本人はドイツがいいんですね・・・・・・」
 え!? フレデリク泣いてる!? しかもなんでドイツ!? もう彼の泣き所が全く掴めないんだぜ!!
 ど、どうしよう。俺の君が代は泣くほど駄目だったのか? なんか日本人としての自信無くなってきた。俺はこれから式典のたびにこの憂いを抱えて国歌を斉唱してい、

「天皇陛下―――っ!!」

 
――俺一人では開けるのも一苦労だった礼拝堂の扉が、悲鳴に近いような大声とともに勢いよく開け放たれた。静かで神聖な空間に慣れていた俺は驚きを通り越して死にたどり着きそうだった。
「な、なんですか・・・・・・」
「あ・・・・・・ミハイル、とコンラード・・・・・・?」
 フレデリクと恐る恐る扉のほうを見ると、息を切らしたミハイルと呆れ顔のコンラードがいた。
「どうしたんだよ、二人と」
「天皇陛下ばんざーい!! 天皇陛下ばんざーい!! 天皇陛下ばんざああああいっ!!!」
 ミハイルが天皇陛下で万歳三唱始めちゃったよ!! 何が起こってしまったんだよ彼は!!
「やっぱりとっつぁんか・・・・・・。だめだぜー、校舎内で日本の国歌なんて歌っちゃあ」
「え? ・・・・・・あ、ああー」
 俺の君が代がミハイルの日本軍魂に火をつけちまったわけか・・・・・・。俺の君が代もまだまだ捨てたもんじゃないな・・・・・・ちょっと自信が戻ってきたぜ、って違うから。
「中庭で水やりしてたんだけどよぉ、いきなりじょうろ放って走り出したからなー」
「ていうか締め切った礼拝堂の外で俺の声が聞こえたってどんな超人だよ・・・・・・」
 軍人版選手宣誓のようなものを始めてしまったミハイルはとりあえず置いて、コンラードがピアノのそばに寄ってきた。・・・・・・そういえば聞いてなかったけど、こいつらって俺と同い年なのか?
「あれ? フレッドじゃん。なんでとっつぁんといるんだ?」
 え? フレッド? ・・・・・・あ、フレデリクのことか。
「朝学校の中見学するって言ったろ。それでピアノの音につられてここに来て知り合ったんだよ」
「はい。僕が君が代を歌ってほしいとお願いしたのです。すみません」
 あ、いつの間にか泣き止んでる。泣くのも早ければ落ち着くのも早いな。
「フレッドピアノうまいよなー。だからさ、野球やれって勧めてるんだけどさ。絶対すごいフォーク投げれるって。な、とっつぁん!」
 俺に同意を求めるな・・・・・・。なんだその大衆的なのに大衆的じゃない推薦理由は・・・・・・。
「あー、ははは。あ、それでさ、今更なんだけどコンラードたちって俺と同学年か?」
「ん? 一年生だろ? 当たり前じゃん」
 当たり前、か。ははは、初等部とかない学校でよかったよ、本当に。
「ちなみに俺とミハイルとフレッドと、ついでにヘンゼルも同じクラスだぜ」
 なんかそこはかとなくそのクラスになりそうな気がする。
「だからお前らは知り合いだったのか」
「あ、それ以前に僕とコンラードは同室です」
「えっ? あれ? そうなんだ。俺コンラードはミハイルと同室だと思ってた」
「最初はそうだったんだけどなー。なんかミハイルのヤツ、俺と同室なの嫌なんだってよー」
 へー・・・・・・・なんでだろ? あんなに仲よさそうなのに、なんて思いながら当のミハイルに目を向けると、ちょうど宣誓が終わったところらしい。また陛下陛下騒ぎ出した。

「天皇陛下万歳! 天皇陛下万歳! 天皇陛下ばんざーい!! 天皇陛下ばんざーい!! 天皇陛下ばんざ・・・・・・
おかあさあああああんっ!!!」

 いきなりの神風特攻隊転身だよ!! しかも敵国艦体じゃなくて日本人の俺に突っ込んできたあああああ抱きついてお母さんお母さん叫ぶのはやめてくれええええっ!! 苦しいんだよ普通にいいいいっ!!
「ううっ、つぶれる・・・・・・! た、助けてくれっ」
 比較的まともなフレデリクに助けを求めると、
「・・・・・・ママ・・・・・・ぅっ、イングランドに帰りたい・・・・・・。日本の文化も学べって言われても、イングランドのほうがいい・・・・・・。日本の音楽も好きだけど・・・・・・イングランドのほうがいい・・・・・・。イングランドが世界一だよぅ・・・・・・もう日本なんて嫌だよぅ・・・・・・帰りたい・・・・・・」
 だめだったー!! 後ろ向き発言全開だったー!! むしろ可哀想になってきたー!! たまには帰っても大丈夫なんだぜ!? そしてこいつまで俺に抱きついてきたああああっ!! 圧死する・・・・・・!!
「っ・・・・・・コンラードっ! もうお前しかっ」
 お、おい、何目を潤ませてるんだよ。何で目じりを指で擦るんだよ・・・・・・!
「コンラード・・・・・・まさかお前まで・・・・・・っ」
「馬鹿・・・・・・、何言ってるんだよ。これは、わさびが・・・・・・目にしみただけだ、ぜ・・・・・・」
 格好つけてる場合かっ!! そして俺に抱きつくなあああああっ!!!
 あほトライアングルにはまってしまった俺は、だんだんと視界が一色に染まっていくのを感じた。真っ白、真っ赤、真っ黒・・・・・・。
 

 ――ああ、これって、空の色だ。真っ白な朝、真っ赤な夕焼け、真っ黒な夜。そして、この俺の見る空の果て、遠い遠い空の下、日差しを受けてたたずむのは――


 
―――おがあざああああああんっ!!!






foolish quartet