流れ星

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 あ、流れ星だ。
 と思う間に消えてしまうものだ、アレは。願い事を三回言えるわけがない。まあ、どんな願い事も叶えてくれるのだから、簡単に出来てしまっては困るのだろうが。難儀だ・・・・・・。誰がこんな迷信を考えたんだ。
「早くもう一度流れないものか」
 いつまでもベランダに立って空を仰いでいる兄さんはまるで阿呆だ。いや、そのものだ。それの権化であり代名詞である。
「いつまでそんな阿呆面で突っ立っているんですか。風邪は・・・・・・ひかないか。・・・冷たくなりますよ」
「冷たくなったら死んでいるだろう! 大丈夫、私は熱い・・・」
「心の持ち主だ、なんていう歯が浮きに浮いて光速で飛んでいくような冗談を言ったら、兄さんを星にしますよ」
「さすが兄弟だ! 以心伝心! 私と初一の心はつながっているのだなっ」
 ・・・本当にお星様になってもらおうか。
「さっき流れたのだから、もう一つくらい落ちてもいいだろう。絶対に三回、願い事を言うんだぞ!」
「星は伝導して落ちるんですか・・・って俺もですか!? 嫌ですよ、この歳になって恥ずかしい」
「初一は恥ずかしがり屋さんだな」
 俺が恥ずかしがり屋で兄さんが水準だったら、世界中の大多数の人間が恥ずかしさのあまり死んでいるだろう。くっ、ここは流すぞ。
「・・・あ、あれって北斗七星ですよね」
「ん? ああ、そうだな! そしてあれが白鳥座でくま座であひる座だ!」
「寝言は寝てから言ってください」
 空を見上げたまま無駄話を続けて、首が痛くなってきた頃。
「あっ! 流れたっ、流れたぞ初一っ! あ、まだ大丈夫だっ。願うのだっ!!」
「ほ、本当にありえないくらい流れてますね・・・」
 今日は流星群の見える日だったのか・・・? なんて都合の良い・・・。
「願うぞ! 初一と―・・・」
「え、ええ。兄さんと」
 兄弟の縁を切れますように。
「ずっと一緒にいられますように、初一とずっと一緒にいられますように、初一とずっと一緒にいられますようにっ!!」
「ええ、兄さんとずっと一緒にいられますように、兄さんとずっと一緒に・・・えっ!?」
 目を開けるとまだ星が降っていて、兄さんがやけに満足そうな顔をして夜空を見上げていた。
「な、何をご町内中に聞こえる声量で言っているんですかっ、あんたはっ!!」
 兄さんを流れ星にした。

 ・・・この願い事が叶うかどうかなんて、死ぬまでわからない。・・・はは。




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