「えーすけくーん、あーそーぼー」 「寄るなっ! ずぼん下ろすぞっ! お前なんて女と遊んでろよっ!」 そんなこともあった。思い出にとんでいた意識を戻すと、田倉社長が俺を凝視していた。 「・・・というのが我が社のプランです」 どこか別の会社の人が発表を終えた。というのに社長はそちらを見ようともしない。ずっと俺を見ている。 社長以外の全員が居心地悪く黙っていると、しばらくして社長はようやく口を開いた。 「今の企画、えーすけくんはどう思う」 ええええーすけくん!? この歳になってこの立場でこの場面でえーすけくん!? えー、え、えーすけっ・・・、おちつけっ。 というかこの場面でなんで俺にふった? 自分の会社の社員に聞こうよ。社長の隣に座ってる社員、なんかぴくぴくしてるしっ! 「え、えー、えーすけ・・・、え、ええ。よ、良い企画だと思います」 正直聴いてなかったしよくわからな、 「ずぼんおろすぞっ!!」 「ええええっ!? いきなりっ!?」 田倉社長が乱心した。勢いよく机を叩き、周りの人間が凍りつくような剣幕で叫んでいる。 「どうして他社のプランをほめているんだっ!」 「え、そ、そんな・・・あの・・・」 「うるさいっ! ぱんつ見せるぞっ!」 田倉社長は手が付けられなくなった。光の勢いで飛び掛ろうとしてくる社長を、ぴくぴくしていた社員が押さえつけた。 皆が怯えた様子で見つめていると、社長は急に大人しくなって椅子に座り直した。 「そういえばえーすけくんはブリーフだったよね」 いきなりのセクハラ発言に場が打ち解けるわけもなかった。みんなの顔がこわばっている。ここは何とか、俺が取り繕わなければならない気がした。 「あ、はは・・・、た、田倉社長も確かブリーフでしたよね」 「今はビキニしかはいていない」 「ビキ・・・紐ビキニ・・・。あ、はは・・・は、わ、私はまだブリーフです、はい」 セクハラにセクハラで対抗してもどうにもならなかった。社長と俺の流派が判明しただけだ。 ここは話をさらにずらしてしまった俺が収拾するしかない。うっすら笑いながら辺りを見回し、目を逸らし遅れた人を視線で射抜いた。 「あ、は、は、・・・さっきの話・・・どう思われましたか?」 何とかさっきの企画の話題に戻そう。俺にふっかけられた人はハンカチで汗をぬぐいながら、 「あ、はい・・・わ、私もブリーフです」 そうして順々に意見が述べられていき、結果ブリーフ派が圧倒的に多いことがわかった。田倉社長は永遠に表情を変えずに俺を凝視している。 ・・・・・・・・・倒産しろっ!! |
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