愛称




「ちぃさん、ちささん・・・ちりさん・・・・・・」
「どうしたんですか、兄さん」
 兄さんがぶつぶつ言いながら廊下をうろついている・・・・・・。邪魔で仕方がない。
「おお、初か・・・かずくんか」
 ・・・・・・は? っけよーい
「のこった」
「何だその反応は。かずくん、今日から私のことをあだ名で呼ぶがいい!」
「か、かずくんって・・・まさか俺のことですか・・・?」
「当たり前だろう! 他に誰がいるっ」
 そり辺の花瓶とか・・・ってさすがに兄さんでも無機物に名前は付けないか・・・・・・。
「って俺!? かずくん・・・って恥! 二十歳過ぎた男性にそれはないでしょうっ!」
「いや、兄弟というものは可愛く愛称で呼び合うものだろう!」
 ま、またおかしな知識を・・・。一体こういった知識はどこで身につけてくるんだ? まったく・・・・・・。
「小さな子供なら有りかもしれないですが・・・、俺と兄さんで?」
「そうだ。私とはつか・・・かずくんでだ」
 ・・・・・・めんどうだ。しかもそこはかとなく嫌だ。でもやらないと泣き喚くからなあ。うーん・・・、兄さんの名前は千里さんだし・・・・・・。
「ち・・・ちりめんじゃこさん」
「そうくるかっ」
「えー・・・、ち、ちくわ」
「食べ物Part2!?」
「ち、ち、・・・ちさとうきび」
「・・・・・・初一、おなかが空いているのか? 兄さんが何か作ってやろう」
 俺が魂をかけてつけたあだ名が気に食わないらしく、兄さんは元に戻った。

 ・・・・・・ち、ち、ち・・・さといも。・・・・・・これだ!





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